CLIP山形映画祭2023:今回よりはじまるなんとなくあげる賞ほか、映画以外のどうでもいい賞あり
今年もやりますかね。映画大賞、ベストバウト賞、なんとなくあげる賞、CLIP山形賞、日本芸能大賞、流行語大賞など後半に続く。
映画大賞ノミネート作品
というか観た映画。
クライ・マッチョ
わかりやすい型どおりのロードムービーで映画として評価がどうこういうものではなく、クリント・イーストウッドが90歳とは思えない体力には驚く映画である。普通、黒澤明のように体力のなさは映像に現れるものだが、アメリカの映画製作システムがわかりにくくさせているんだろう。
ウエスト・サイド・ストーリー
映像をクラシカルにして、新しさはない演出にして、アカデミー賞7部門ノミネートなる宣伝で客を入れる。それがハリウッド。兄を殺した男と恋愛する、よくわかんない物語。
コーダ あいのうた
境遇が違うにしろ親が子の夢を潰そうとするのはありがちな話だし、現実では商売人の子供なんて残酷な話ばかりだ。この映画の場合は最終的に子を応援するに至ったけれど、それがいかにも物語なわけでベタであり王道なんだけどきちんと感動させる力量がある、と見るべきか。
ベルファスト
ベルファストって田舎村かと思ったら北アイルランドの最大都市だった。
街は暴動で分断したりゴタゴタあって子供が翻弄されるけど、そんな物語よりカメラワークの美しさとカッコよさに意識が奪われる。モノクロで余計な色の情報がなくクールな画は成立するが、それと家族愛の物語はシンクロしない気がする。母親役のカトリーナ・バルフが綺麗過ぎるのもそうかも。
TITANE/チタン
前半、気持ち悪くて観ていられなくなった。後半、物語は大きく転換するらしいけど、その前に劇場を出てしまった。
こんな映画変態じゃなきゃ撮れない。
親愛なる同志たちへ
ソ連時代のノボチェルカッスクで実際に起こった虐殺事件を基に描いたドラマ。スターリン信仰者の祖国への愛が憎悪へと変貌していく、なかなか衝撃的な内容ではある。権力か労働者か、どちらかの立場で描かれるというより冷めた視線になっている。
KGBの職員が登場して主人公のの家を家宅捜索したと思ったら、途中から急に手助けをする立場に変っていく謎の展開になる。だからこのKGBが怪しいので最後にどんでん返しがあると思いきや、そうでもなかったりする。やはり謎。
画角が正方形に近いので、観客の視線は画面中央に意識されていく。主人公の日の丸構図は、この映画唯一の“冷めてない視線”かもしれない。
シン・ウルトラマン
どこか懐かしさを感じる映像のトーンの一方、カット割りが多く展開が早い。現代と昔の融合か。
人物を画面の端に置いて他の部分は影にしたり、それほど意味がなさそうな構図を連発するのは、かつてのウルトラマンへのオマージュだろうか。
そういえば、ウルトラマンが喋った。
カモン カモン
落ち着いたモノクロ映像はあまりハイライトがなくてさらに落ち着いた感じがする。特に劇的な展開があるわけではなく、印象的なセリフの掛け合いが時々ある程度。だけど楽しく、幸せ感があるという具合か。
非常にゆっくりズームインしたり、ズームアウトしたり、というのは特定の時間を操作するような効果があるのだなぁ。
パリ13区
モノクロ映像で軽い人間模様が繰り広げられる。ヌーベル・ヴァーグや、あらゆる監督へのオマージュを織り交ぜていて、エミリーが中華料理屋で踊り出すシーンはどう見てもゴダールへのオマージュなのだが、アンナ・カリーナの可憐さや映像の鮮烈さはない。希薄な人間関係になってるのは日本も同じかもしれないし、好きになれない。
アネット
ボーイ・ミーツ・ガールやポンヌフの恋人のイメージしかなかったカラックスの新作を観に行ったら、まさかのミュージカルだった。途中、子供アネットが生まれてから展開が変わるらしいけど、その前に映画館を出て帰ってしまった。しんどい。映画「TITANE/チタン」もそうだけど、途中までもたなかった。映画の2時間は長い。
東京2020オリンピック SIDE:A
極端なドアップにしたり、そういうのも含めて過剰な演出になるというか、いろいろな場面で余計なもの、という感じが否めない。さらに天皇陛下による開会宣言の直後に人のいない客席を写すのは、意図的で悪意ある編集だと思う。あのポンコツ開会式の中で、陛下の開会宣言は凄まじい威厳を放っていたはずだ。これがスタッフに暴力振るう監督の映画なのか。監督の選出を間違えたな。
いまはむかし 父・ジャワ・幻のフィルム
ある意味、私的映画。父親の足跡を追いたいのか、戦争にどうのこうの言いたいのか、アバウトなのだなぁ。
トップガン マーヴェリック
誰もが思った通りのコテコテ、ベタベタな内容だった。映画会社が稼ぐだけの単なる客呼び映画なのだからリピート客があらわれるが、そういう人間にはなりたくない。
峠 最後のサムライ
ジャニーズなどのアイドルが出演しないと客が入らない日本映画は残念だが、そうではない映画だったので鑑賞した。そうではない映画だけにわかり易い説明的な演出になってしまうのは仕方ないか。
ワン・セカンド 永遠の24フレーム
ある意味ベタな内容ながら、巨匠チャン・イーモウのどっしりとした安定感に浸りながら鑑賞するというのは贅沢なものだ。ラスト、2年後に出会うヒロイン役“リウ・ハオツン”の可愛さに酔いしれるがいい。それは「初恋のきた道」のチャン・ツィイーと全く同じ、真正面からのアップショットだった。それに耐えられる俳優がどれほどいるのか。
親娘の愛、映画への愛、愛にまみれている。
こんなにいい映画がたった1週間の上映?トップガンなんて観てる場合かよ。
PLAN 75
発想が安易でしょうもないと思う。こういうのを観て真剣に社会について考えるような人はバカだ。
長崎の郵便配達
演出がどうとかいう映画ではないので、まぁこういう人もいるんだなぁという話。日本人なら誰もが教科書などで見た記憶がある、あの写真の被爆者は・・・谷口さんだったのか。
ブレット・トレイン
殺人を軽く描くし、タランティーノっぽいけどスタイリッシュではない。何だかよくわかんないけど、あえてゴリ押ししていく。列車の脱線は事故の記憶があるので、日本人向けにはよろしくない。
アルピニスト
命綱なしで単独でクライミングをする、という理解不能な男が前人未到な挑戦へ挑んだりするドキュメンタリー・・・映像が危なすぎて見てられない。そんな事続けていたらいずれ死ぬに決まっているので、最後に死んでしまう。原因は滑落じゃなくて雪崩だった。
ボイリング・ポイント/沸騰
全編ワンショットで手持ちカメラのハラハラドキドキ90分だった。このテの映画を観るとカット割の重要さを実感する。であるがゆえに映画として評価しにくいと思うが、物語としては楽しめる。
島守の塔
演出は教科書通りというか特別なものは何もないのだけれど、話の内容が強烈過ぎて普段何を見ても感動しない筆者がグッとくるほどで、特に知事へのお礼に唄って踊る人たちのシーンには涙が出そうだった・・・
LAMB/ラム
荒唐無稽な話をシリアスに描く変な映画で、タルコフスキーっぽい描写があるのは余計に違和感を増幅させる。ペートゥルの役割が謎。
耳をすませば
ここまでわかりきったドラマは「サザエさん」以来だけど、それを楽しめる人はどのくらいいるのかね。なぜこの映画を作る必要があったのだ?
2046
4Kリバイバル上映。カッコいいカメラワークの連発かと思いきや、似た構図が続いて後半ダレてくる。
百花
重くて切ない現実的な話だが、よく考えたら普通の話。
アムステルダム
映画館職員の態度が悪くて映画どころではなかった。マスクしてるから声が聞こえないのに逆切れされるんだもの。
土を喰らう十二ヵ月
不思議と松たか子が色っぽい。ツトムが真知子との同居を拒否したのは本人の幸せを願ったからだろう。料理作ってひたすら食べるだけで”間”が持つ、というのはいい映画なんだと思う。
すずめの戸締り
アニメの知識がないので実写と違って映画としてどう評価されるのかよくわからないが、震災あるいは被災地の描写は拒絶反応が出るので、観ていられない。トラウマがまだ続いているのを実感しただけで、この映画を観て救われるなんてあり得ない。
RRR
映画に賭けるこれほどまでの情熱は、日本映画にはない。たまには楽しい映画もいいもんだ。
人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界
指を失ってまで何故、山にのぼるのか。ほとんどの人にはわからない。変態。
ラーゲリより愛を込めて
ここで泣いてください、はいどうぞ、というほどのわかりやさ満点で、そのまま受け入れて泣きすする観客はたくさんいた。実際の抑留生活はもっと残酷だろうけど、なぜかシリアスに描かれていない。娯楽に徹するというか。安田顕が出てきたときは笑う。
金猫賞 Chat d’Or (グランプリ)
ワン・セカンド 永遠の24フレーム
結局は巨匠が撮った映画が勝利するのであった・・・
ベストバウト賞
村田諒太 vs ゲンナジー・ゴロフキン
2022年に唯一、生観戦したボクシングの試合となった。現地で観戦して思うのは、多くの人が語る「村田のゴロフキンへのボディ攻撃は効いた」というのは疑わしいということ。あれは演技であり、村田のスタミナを消費させて後半勝負をするつもりだったと思う。GGGは百戦錬磨の驚異的なボクサーだったのだ。
なんとなくあげる賞
運慶
師でもある父の康慶が始めた鎌倉彫刻の新様式を完成させた歴史に名を残す天才仏師。いろいろ言うと“みうらじゅん賞”みたいだから余計な話はしないことにする。
CLIP山形賞
ビートきよし
最上町出身の師匠は、毎日のようにTwitterでつぶやいている。内容は、スタバ以外の場所で「すたばなう」の謎ツイートをするか、麻雀をしている。山形関連のイベントに顔を出すことはなく、すっかり横浜ッ子である。本名は兼子二郎(じろうではなく、にろう)。弟子にビトタケシがいる。
日本芸能大賞
レッツゴーよしまさ
衝撃的すぎる志村けんのモノマネは、笑いを通り越す圧倒的クオリティだった。いっこく堂以来の驚き。
流行語大賞
「新しい戦前」(タモリ)
「徹子の部屋」で黒柳徹子から来年はどんな年になるかと問われ「誰も予想できないですね。新しい戦前になるんじゃないですかね」とタモリ氏が述べた。ブラタモリを時々見るけど、このお方の記憶力や情報処理能力など、計り知れないものがある。
おわりに
映画を観る度コツコツ書きためておき、一年の楽しみがようやく終わった気がする。